七夕
今日は七夕…
僕はもう一度会いたくて、
短冊に願いを書く…
『彼女にもう一度会えますように…』と。
何年前のことだろうか…
彼女と二人で星を見に行ったのは…
あの日彼女が消えてから、
僕はもう数年以上彼女とは会えていない…
やはり、
もう一度会うことは難しいのだろうか…
彼女はあの日言った。
また「戻ってくる」と…
だから僕は彼女に会えると信じている…
こうして、
願いが叶うかもしれないのであれば、
その可能性を少しでも信じたい。
そう思いながら、
書ききった願いを笹に吊るす…
そして、僕は「ある場所」に向かった…
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僕は「ある場所」に着いた。
「ある場所」とは、もちろん、
「あの日」彼女と星を見た場所である。
『ここに来れば、会えるような…
そんな気がするんだ…』
彼がここに来るのは今日に限らず、
去年も一昨年も、その前の年も、
ずっと来ているが…
彼女に会えた訳ではなかった。
それでも、彼は会いたくて、
毎年ここに来る…
何故、いつもこの日なのか?
それは、星を見た日が、彼女が消えた日が、
七夕の日だったから。
そして、ここに来れるのは今日で最後になる…
理由は、家庭の事情でこの土地を離れないと
いけなくなったから。
今年はあの日、彼女が消えた時間までいることが出来る。
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「全く君ってやつは…
会えるかどうかもわからない私のために、
何年も何年も、ここに来てくれるなんてな。」
気が付けば、彼女はいた。
『□□ちゃん!』
「随分と長く待たせちゃったね…
ごめんね。■■■くん!」
『よかった…最後に会えて…』
僕は彼女に抱きつきながら言った。
「そっか…最後になっちゃったか…」
『僕…
引っ越さないと行けなくなっちゃって…』
「やっと、私が会えるようになったら、
今度は君が行っちゃうんだね…」
『ごめんね…』
「君が謝ることじゃないよ!
二人で星を見よ!」
『うん。』
僕達は手を繋いで、空を見た。
空は『あの日』と何一つ変わらず
輝いていた…
「あ!流れ星!」
彼女が指を指して言う。
前言撤回。
今日見た空は、『あの日』よりも綺麗だった。
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おしまい